ブタンのC2-C3結合に関する立体配座とエネルギー

ブタンの立体配座はちょっと複雑です。ここではブタンのC2-C3結合について考えます。
下には、ブタンのC2-C3結合についての立体配座とエネルギーのダイアグラムを示しました。
ブタンの場合、これまでと違って、山の高さは一定ではありません。まず、メチル基同士が、anticlinalの関係にある配座では、antiperiplanarの配座に比べ3.7kcal/mol高くなっています。

 

 

メチル基同士の二面角が120度となったeclipse配座のエネルギーは、anticlinalの関係にある配座に比べ3.7 kcal/mol高くなっています。
これまでのエタンとプロパンの議論の過程で、水素同士のsynperiplanar反発が1.0 kcal/mol、水素とメチル基とのsynperiplanar反発が1.4 kcal/molと見積もってきました。
これを前提に、二つのメチル基の二面角が120度となった配座では、

  水素−水素synperiplanarが1箇所、 (1.0 kcal/mol ×1 )
  水素とメチル基とのsynperiplanar反発が2箇所、 (1.4 kcal/mol ×2 )
 


合計3.8 kcal/molとと計算でき、グラフから読み取れる3.7 kcal/molと良い一致を示します。

メチル基同士がgaucheと成った場合、それらがantiである配座に比べ1.0 kcal/mol高くなっています。
これは、水素間のgauche反発は無視できたのに対して、メチル基同士のgauche反発は無視することができず、約1.0 kcal/mol存在すると考えることができます。
 
 

 
  
ブタンのeclipse配座で新たに考えなければいけないのは、メチル基同士のsynperiplanar反発です。
ダイアグラムからメチル基同士がsyn配置となったときの立体エネルギーはメチル基同士がanti配置の配座に比べ、6.0 kcal/molと非常に高くなっていることが読み取れます。
1.0 kcal/molと見積もられた水素間synperiplanar反発が二箇所ありますので、残りの4.0 kcal/molがメチル基同士のsynperiplanar反発と見積もることが出来ます

 
 

 
 

単純なC2-C3結合の単純な回転では、二つのメチル基はファンデルワールス半径以下に近づいてしまっている。
実際には、∠CH3C2C3の結合角が本来の109.5度から115度に広がってその立体反発を避けています。